木の家で暮らしたい!
「木の家で暮らしたい!」は「木の家に住みたい」ではないという事です。
何故木の家?
今、住宅造りは全国、地方、地域規模の大中小様々なハウスメーカーと称される事業体主導で産業としての住宅造りが成されています。住宅文化というには程遠く日本全国画一的な「商品としての住宅」が氾濫しています。
そうした中での家造はどうあるべきでしょうか?
生き方、暮らし方といった観点からの家造りが大切です。
「自分らしくどう生きるか」そして「自然の中で健康な生活をする」といった価値観での家造りです。
人間は動物です。
暑さ寒さに対応し、免疫力を高め動物としての機能を損なわない様にしなければなりません。
極力エアコンに頼らず健康に暮らす事が重要です。
こうした自然との共生を大切にした観点に立った時、高温多湿な日本の気候風土や歴史的文化的背景からも木造が最適でしょう。
木造と言っても自然の気調 (断熱、調湿、浄化)をするといった木の特性を生かした「ホンモノの木」の家造りです。
こうした人生観、価値観を大切に自然との共生を大切にした舎造り。
だから木の家!なのです。
近くの山の木で家を造るいうこと
木の家、国産の木を使った素材の見える家の人気が高まりつつある今、その木材の生産地や、造り手である職人の事はほとんど誰も知りません。
ほんの40~50年前まで日本の多くの地域では伐採、製材の職人、そして大工、左官などの職人がいれば木の家は当たり前に出来ていました。
大きく見れば我が国の街と村は、家造りを中心とする木材の生産と消費とという関係で深く結ばれ、其の事が山村の林業を成立させ、健全な森林の存在を支えていました。
街の水も綺麗な空気も、実はこの周りの森林があることによって享受できていたのです。

家づくりの近代化がもたらしたもの
家を建てようという時、昭和40年代頃までは、木材をはじめ材料はまだ国産の自然素材が主でした。
経済成長と共に工業製品による近代化が家づくり全体に及び、新建材と外材が日本の家を大きく変えました。しかし何よりも大きく変わったのは家のつくり手、その社会システムです。
今まで顔の見える地域の職人集団によって造られていた家が、工務店さらには大規模な住宅産業によって作られるようになったのです。
町から、やがて村からも旧態の木の家づくりのシステムが失われてしまいました。
今、日本の林業はもう壊滅的状態なのです。
国産材を使う事、それは間違いなく大事なことですが、本当に期の家造りに適した木材をすぐに手に入れられるかどうかはおぼつきません。
この期に至ってというか、それ故にか、今度は「木の家だ、自然素材の健康な家が欲しい」という声が全国で鬱勃と起こってきたのです。
この国の家造りが今、根本的に問い直されているのは確かです。
風土に根ざしたエコロジカルな家
木はかって生きものだったのですから、一本一本性質も異なります。
均質で完全無欠の木は無いのです。住み手も木という自然素材を十分理解し、おおらかに付き合う気持ちがなければ木の家には住めません。住み手も、つくり手も、もう一度木の家、自然素材の家を本当に知ることから始めなければなりません。
骨組み架構こそ木造住宅の命です。
古来、われわれの祖先は、今は伝統構法と総称される木組み架構で家をつくってきました。
そこには木の性質を最大限に生かす合理的な架構をする、その空間を人がうまく利用するという思想が読み取れます。
日本の家は骨組み架工をあらわしにすることによって、それを美しい空間造形にまで高め、その空間に適して暮らすことに思いやる住まいの文化を生んだのです。
木の家をつくるなら生産地の森林を生かし、生きものである木を生かすこと、住み手の身体に馴染み暮らしに合う架構法が望まれます。

職人の技術を活かし地域でつくる
モノを作るのは結局人だということです。
大工職人だ左官職人それぞれのパートを受け持つ人が最後まで責任を持った仕事をするしか良い家を作る方法はないのです。
木の家を造ろうとすればなおさらです。
再び自然素材で家を造ろうというのなら、人がモノと関わる経験を通して得た知恵と技術が不可欠です。
しかしそれは決して現代の優れた技術を否定するものではありません。
木という自然素材を造る側の合理性でねじ伏せるのではなく、人が自然の持つ合理性に合わせて利用することです。

今、木の家をどうつくるか
モノをつくる仕事は本来、単なる労働とは違う達成感があるはずです。
これは仕事の苦 労を通して得られる満足です。
職人の誇りもまたここから生まれます。
利潤のための合理性だけではなく人が働くこと、生きる満足をも含めた新しい木の家づくりのシステムが求 められています。
ただ伝統的構法に帰ろうということではなく、現代の新しい人とモノづりのシステムを作り出すことを意味します。
何か新しい大掛かりな組織をつくることではありません。
全国津々浦々の地域の林業家、製材所、 大工職人、工務店、設計者、住まい手、一般市民が顔の見える関係を大切にした新しい家づくりのネットワークをつくるのです。